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20230807_別れ

  • 中川朋樹
  • 2023年8月8日
  • 読了時間: 3分


ブログなんて向かないから始めるつもりはないけど、

今日ばかりは書き留めておきたいと思った。


別れ。


偉大な人との別れ。

ずいぶん痩せてしまっていたけど、眠っているような表情だった。


いつも、ほんの少し、ふんわり、微笑んでるような人だった。


出会いはもう覚えてない。

主催していた陶芸教室に友達と参加したのがきっかけだったような。


制作会社を辞めてフリーランスになった僕は

彼の事務所にiMacを持ち込んで、机を借りて仕事をさせてもらっていた。


その事務所には「囲炉裏」があった。

それを囲むように毎日いろんな人が集まった。


さんまを焼いたり、流しそうめんしたり、

鍋、餅つき、Tシャツ作り・・・


流しそうめんに使う竹を一緒に切りに行ったこともあった。

車内で下ネタを言い合って笑った。


何かを身構えて企画して、という感じは一度もなく、

ごく自然な流れでイベントになって、いつのまにか人が集まった。


いま思えば。


あの頃、毎日めちゃくちゃ楽しかった。

気のいい仲間に囲まれた、安心できる居場所だった。

頬が痛くなるほど笑った。

「感謝」というのは「細胞が震えるような感覚」なんだと初めて知った。


多分1年くらいの短い期間だったけど、僕は今の地域に引っ越した。

自分一人の力でフリーランスに挑戦してみたいって、近所のホルモン屋さんで伝えた。


個人事業主に登録して、がむしゃらに働いた。

次第に連絡も遠くなり、年賀状も途切れ、干支がひと回りした。


去年だったかある日、彼からの電話。


手術の前だったのかな。

「脳癌」だとって言っていた。


記憶が消えるかもしれないから、覚えている人に電話をかけていると。

「自分の人生にこんなことが起こるんだ」って笑っていた。


あれから何年も経っていたのに、

思い出してくれて、連絡してくれたことが素直に嬉しかった。

反面、その後どうなったのかは気になっていた。


コロナの関係でお見舞いもできなかった。

退院したらまた飲もうってことで、それっきりだった。



自分から顔出せばよかったって、いまさら思う。

本当にいまさら。


お別れの場には耐え間なく多くの人が行き交う。

当然知らない人ばかり。

あれから10年以上、彼にはどれほどの出会いがあったんだろう。


彼は人と対立したことはあったのだろうか。

とにかく誰とでもフランクに、穏やかに、コミュニケーションをとった。


目立つわけでもなく、思想を主張するわけでもなく、

淡々と、ほんのり微笑んでる姿が印象に残っている。


偉大な人。


過ぎたことだと思っていたけど、

溢れ出したこの思い出を大切にしよう。


彼のようにはなれないけど、

この憧れを大切にしよう。


ごく短い時間とはいえ、

彼と出会って、共に過ごせた日々は僕の誇りだ。


 
 
 

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