20251017_回想1 初就職といじめ
- 中川朋樹
- 10月17日
- 読了時間: 4分
更新日:10月30日
出社してまず
ラジオのアンテナを立て、J-WAVEにチャンネルを合わせる。
先輩方の机を拭き、打ち合わせテーブルを拭く。
ゴミ箱を回収し、ゴミを出す。 フロアのモップがけ。トイレ掃除。
珈琲メーカーのドリップ準備。
これが毎朝のルーティンワークだった。
ー
経理担当のお局は、週に3回出社した。
ちょうど朝のルーティンを終えた僕の横にきて、 できたての珈琲をコップに注ぎ、ひとくち含んで一言。
「・・・不味い。」
サーバーの蓋を開け、全ての珈琲をシンクにぶちまけた。
お局は普段、僕とは一切口もきかず、ただただ睨んだ。
皆がいる前に限って、何かにつけて叱りつけた。
ー
スタッフは全員、見て見ぬふり。
むしろ常に欠陥を探されているように感じた。
何か話せば注意された。
何か動けば違うと叱られた。
風邪をひけば迷惑だと言われた。 まさに四面楚歌だった。
次第にどもって喋れなくなった。怖かった。 ますます疎ましい存在として扱われ、 背後から責めるようなため息が聞こえた。
ー 仕事といえば、先輩方が出力したレイアウト用紙を カッターとセロテープでひたすら繋ぎ合わせる作業。
来客時のお茶汲み。そして電話番。
いつまで経っても担当媒体は与えられず、 日々雑用をこなした。
なんとか取り入ろうと、年齢の近い先輩に、
ペットボトルを買っておまけフィギュアをプレゼントした。
翌朝にはゴミ箱に入っていた。
そりゃ普通は要らないだろう。
捨てられたフィギュアを回収して、
血液が冷える。体が冷たくなる。
ー
表参道にあったデザイン事務所。
ボスは雑誌業界で三本の指に入ると言われる著名人だった。
少数精鋭スタッフとビッグネームな月刊雑誌を何本も手がけていた。
明るく白い事務所で、皆がボスを囲んで楽しそうにワイワイやっている間、
暗いキッチンでシンクを拭いたり、コーヒーを淹れ直しながら、
それが終わるのを待っていた。
あちら側とこちら側、目に見えなくとも、確実に、 気が遠くなるほど、分厚い壁があった。
この珈琲に何を混ぜたら、あいつらを56せるだろうか・・・
一人一人への呪詛をノートに書き殴った。
ー
走馬灯のように過去を振り返り、毎晩のように懺悔した。
あの時あの瞬間、あの人を睨んだ自分の目はどんなに醜悪だったろうか。
あの正義感、あの許せない怒りが、どんなに人を傷付けたのだろうか。
価値観が180度ひっくり返る。
自分が深く傷付いて、初めて人の痛みを知った。
初めて自分のエゴと対峙する。
睨みつけるお局の目が、自分の目と重なる。
内心偉そうだった自分。 人を見下し、評価していた自分。 感情がそのまま顔に出た。気持ちが理解されると思っていた。
自己中で、身勝手で、甘ったれた性根に、
自己嫌悪が爆発した。 泣きながら、吸いもしないタバコの火で手の甲を焼いた。
なんとしても自分に罰を与えなければいけなかった。
痛さは全く感じなかった。
こんな子供じみたパフォーマンスの虚しさよ。
どこか冷めた自分が眺めている。
完全に消滅した自己肯定感。
残されたのは、自己の否定と嫌悪だけだった。
【!】グロ注意

毎週、日曜の夜になると、 息も吸えないほど恐怖が込み上げ、 泣きながら全身を掻きむしった。
全身蕁麻疹。
スピリチュアルにすがった。
占いサイトに登録した。
「逃げ」ではなく「卒業」? この状況から「卒業」できるのはいつだ?
当時は「石の上にも三年」が常識だった。
1年で転職なんてあり得ないと思った。
人生の失敗だと思った。
次第にオシッコに
何か粉状のものが
混じるようになった。
いろいろと限界だったと思う。
身体の異変に対する恐怖もあって、勇気を出してボスに退職を願い出た。
1年ちょっとの地獄の日々。
ーーーーーーーーーー
もう20年ぐらい前になるが、
初就職で見事に出鼻をへし折られた体験。
夢も希望もへし折れた。
人生を整理するに当たって書き留めておきたいほど、
強烈なインパクトだった。
案外いろいろ覚えていて、思い出すにつれ、
どんより沈んでしまった。
しかしこれはあくまで過去のことであり、 過去の意味を捉え直すことができるのは、
常に現在(いま)の自分なのだ。
ー
次の転職先でも、かなりのブラック企業を体験することになるが、
それも後日まとめたい。

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