20251030_回想3 組織にとって迷惑な存在です。
- 中川朋樹
- 10月30日
- 読了時間: 3分
「あなたは組織にとって迷惑な存在です。」
副社長から自分に向けた言葉が、社内メールで社員全員に届いた。
フォントサイズは大きく、文字は赤色だった。
なぜか打ち合わせに呼ばれない。
なぜかデザイン案がスルーされる。
なぜかレッテルを貼られていた。
「自分のこだわりを優先して、全体の流れを見ていない」
ー
何の案件だったか、クライアントへの提案に間に合わせるよう準備が進められていた。
自分がデザイン案を準備し、先輩がそれを企画書にまとめて提出する流れだった。
スケジュール通りに先輩にデータを送り、自分の役目を果たしたと思っていた。
「遅れる」ことを極端に恐れるタイプなので、そこだけは確実だったし、
問題なく進むはずだった。
しかし、いつの間にか「提出ギリギリまでデザイン案が届かず、ものすごく困った」
という話になっていた。
こちらに何を指摘するでもなく、先輩はそのことを副社長に陰で密告し、
激怒した副社長から嫌がらせを受けるようになり、
上記のように一方的なクビを言い渡されるに至った。
ー
そもそも事実無根だったので、何が起きているか理解できなかった。
ただでさえ働き詰めの日常に加え、理不尽すぎてこの頃の記憶が飛んでしまっている。
副社長は社長夫人で、現場における実質的な権力を握っていた。
気に入らない人間は次々に辞めさせた。
カップ麺を開けるタイミングでクライアントから電話があっても、
食べることを優先する人だった。
あの時はつまり、自分に順番が回ってきていたのだろう。
社内メールには、もう一人についての言及もあった。
新人ライターの男性に対して「臭くて迷惑なので、Yシャツを洗濯しなさい」
という内容だった。完全にいじめだった。
本人とは交流がなかったので詳しくはわからないが、けっこう酷い。
彼はうつ病の診断をもらったそうだが、
副社長からは「ちょうどよかった」という言葉と共にクビになったらしい。
ー
中途採用メインの制作会社で、常に足の引っ張り合いだった。
役に立たないと思われたら最後、
陰で勤務態度を否定され、陰で人格を否定され、陰でいじめられ、
辞めさせられた。
ホームの人混み。異常に重い両足。
終電の駅を降り、アパートまで歩けず、道端にしゃがみ込んで、
通り過ぎる人をボーッと眺め続けていた光景だけ覚えている。
そういえば、終電帰りの吉野家で、態度の悪い学生バイトにブチギレて
「テメー舐めてんのか!?」と詰め寄ったこともあった。
精神的ダメージ、ストレスに満ち満ちていたが、
それでも絶対に辞めなかった。
デザイン事務所での屈辱を繰り返したくなかった。
ただ、ここではとにかく忙しかったことが、
自分にとっての救いだった。
何件もの媒体を一人で担当したし、社内イラストレーターとして描きまくった。
1千万の売上げになるカレンダーコンペも3年連続で受注した。
それなりに会社に貢献したため、一定の存在価値は認められていた。
仕事に没頭すれば周囲の雑音は消え、
成果を挙げさえすれば、居場所を勝ち取ることができた。
とにかく仕事は好きだったし、無限に働けた。
ワーカホリックでもなんでもいい。
日常の全てを切り捨てて作り続けるトランス状態が、心地よかったのだ。
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人間関係が一番難しいと言われる。
本当にそうだし、本当にいろんなことがあった。
腎機能障害は残り、髪の毛は薄くなり、友人とも縁は切れたが、
20代を終えるまで、こういった漆黒ブラックな環境に身を置けたのは、
個人的には、貴重でありがたい体験だった。
そのおかげで、自分の今があると思っている。


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